🌿 監修:田村農園📊 難易度:初級⏱️ 読了時間:約6分

🌿 この記事のキーポイント

  • とうもろこしは収穫後も呼吸を続け、実に溜めた糖を燃料として消費する
  • 呼吸の速さを決めるのは温度。熱を持ったままだと甘さは減り続ける
  • 田村農園は夜明け前に手で収穫し、すぐ2℃の冷蔵室へ入れる
  • 芯まで冷えるのに一晩かかるため、収穫翌朝に箱詰めして発送する
  • 箱の中では立てて詰める。届いた後も冷蔵庫に立てて入れる

🌿 この記事の監修生産者

田村農園(北海道虻田郡真狩村)。羊蹄山のふもとで、新潟から入植して130年。5代目の田村豊和さんが畑に出ています。とうもろこしのほか、アスパラガス、じゃがいも、にんじん、ゆり根などを育てています。真狩村のうまコーン選手権で5連覇。

とうもろこしの甘さは、畑で決まると思われがちです。ところが実際には、穫ってから口に入るまでのあいだにも甘さはどんどん減ってゆきます。真狩村の田村農園は、収穫したその日には発送しません。2℃の冷蔵室で一晩寝かせてから、翌朝に箱へ詰めます。その理由をお話しします。

思ったより甘くなかった、の正体

とうもろこしを茹でて、想像していたほど甘くなかった。そんな経験をお持ちの方は多いと思います。品種が違ったのだろうと考えがちですが、原因が穫ってからの時間にあることも少なくありません。

とうもろこしは、もぎ取られた後も生きています。人と同じように呼吸をしていて、その燃料になるのが、実に溜め込んだ糖です。畑から離れた瞬間から、甘さは静かに使われ始めます。

そして、この呼吸の速さを決めているのが温度です。実が熱を持っているあいだ、呼吸は速いままで、糖は減り続けます。冷えれば呼吸は静かになり、糖は実の中に残ります。

この記事の原理

とうもろこしの甘さは、温度と時間で減っていく。冷やせば、減り方が遅くなる。

田村農園がやっているのは、この時間を止める作業です。収穫したとうもろこしをすぐ2℃の冷蔵室へ入れ、芯まで冷やしきってから送り出します。どこで熱が生まれ、どこで冷やすのか、収穫の朝から順に見ていきます。

田村農園の恵味ゴールド
真狩村の畑

糖が一番多いのは、夜が明ける直前

甘さを守る作業は、収穫の時間から始まります。日中、とうもろこしは光合成で糖をつくります。夜になって気温が下がると呼吸が静かになり、つくった糖が消費されずに実へ溜まっていきます。その量が最も多くなるのが、夜が明ける直前です。

だから田村農園は、朝4時から穫ります。まだ暗いうちに、家族総出で一本ずつ手でもぎ取ります。多い日で3トン。すべて手作業です。

もっとも、夜明け前の収穫は真狩の農家ならたいていやっています。田村さんが差をつけたのは、この後の工程でした。

穫った瞬間から、熱との勝負が始まる

もいだばかりのとうもろこしは、熱を持っています。夏の畑で育った実の温度が、そのまま残っているからです。

早朝に穫り、朝から昼にかけて選別して箱に詰め、それからクール便に載せる。この数時間、とうもろこしは熱を持ったまま夏の空気の中にいます。段ボールに入れてしまえば、熱はさらに抜けにくくなります。冷蔵で運んでも、箱の中心は簡単には冷えません。

朝穫れをその日のうちに送る。田村農園も以前はそうしていました。お客様にとってそれが一番いい方法だと思っていたからです。ある年、田村さんはここを疑いました。速く送ることと、甘いまま届けることは、同じではないのではないか。

2℃の冷蔵室

2℃で一晩。芯まで冷やしてから箱に詰める

田村農園が出した答えが、大型の冷蔵室でした。庫内は2℃。家庭用の冷蔵庫よりかなり低く、凍る手前のぎりぎりの温度です。ここまで下げると、とうもろこしの呼吸はほとんどなくなります。

穫ったとうもろこしは、夏の空気にさらす時間をつくらず、すぐこの冷蔵室へ入れます。そして一晩、そのまま寝かせます。表面が冷たくなっても、芯まで冷え切るには2℃で一晩かかるからです。芯に熱が残ったまま箱に詰めると、その熱が箱の中にこもって、輸送中も呼吸が続いてしまいます。

翌朝、完全に冷え切ったとうもろこしを冷蔵室の中で箱に詰め、そのままクール便に載せます。冷蔵室のドアから、お客様の家のドアまで。収穫したその日に送ることよりも、芯まで冷やしきることを選んだ結果です。

箱の中では立てて詰める

寝かせて詰めると、実と実が密着して熱の逃げ道がなくなります。立てておけば、あいだを熱が抜けていきます。届いた箱を開けると、ヒゲを上にしたとうもろこしが並んでいます。

届いてからは、この2つだけ守ってください

ここまでの理屈が分かると、家庭での扱い方も決まります。やることは2つです。

1. 立てて冷蔵庫へ

箱の中と同じ理由です。すぐ調理しないときは、ヒゲを上にして立てたまま冷蔵庫に入れてください。

2. できれば当日中に

冷蔵で3日から4日は日持ちしますが、糖は少しずつデンプンに変わります。早いほど甘さを楽しめます。

田村農園が育てている恵味ゴールドは、粒の皮が薄く、届いた当日なら生でも食べられます。噛んだ瞬間に果汁のような甘さが広がります。冷やしきって届けているからこそできる食べ方です。

甘さの土台にあるのは、土と寒暖差

冷やす技術は、減らさないための工夫です。そもそもの甘さは、畑でつくられます。

真狩村の8月は、日中25℃を超える日がある一方、夜間から早朝は12℃から15℃、冷え込む日には10℃前後まで下がります。一日のうちに10℃以上の落差があります。昼につくった糖が、夜の冷え込みで実の中に留まる。この繰り返しが甘さを濃くしていきます。

土にも手を入れています。田村農園は息吹農法という土壌改良と、EM菌の散布を組み合わせています。畑では草丈が伸び、茎が太くなり、根が深く広く張るようになりました。風で倒れることもほとんどなくなったそうです。根が張れば養分と水を安定して吸い上げられ、その分が実に回ります。

土の状態を保つため、4年に1回は別の作物を植えて連作を避けます。有機肥料と堆肥も惜しまず入れます。この土と気候で育った田村農園のとうもろこしは、例年20度から24度の糖度が出ます。収穫期には糖度計で測っていて、今年の最初の実測は22度でした。

名前を隠して選ばれた5年間

真狩村の道の駅、真狩フラワーセンターでは、毎年うまコーン選手権が開かれます。農家の名前を伏せた2本を食べ比べ、立ち寄ったお客様が投票する勝ち抜き戦です。産地の朝穫れを日常的に食べている人たちが審査するので、ごまかしがききません。

田村さんは、この大会で何年も勝てませんでした。土を変え、届け方を変えて3年後、初めて名前を伏せたまま選ばれます。その後も勝ち続け、気づけば5連覇していました。

収穫量は年間およそ20トンです。以前は3倍の面積で作っていましたが、他の作物の収穫と重なると、穫り頃を外れたとうもろこしが出てしまいます。未熟なものやピークを過ぎたものを送らないために、作る量のほうを減らしました。出荷は毎年8月上旬から9月上旬までのおよそ1ヶ月です。

田村農園(虻田郡真狩村)


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❓ よくある質問

Q収穫したその日に発送しないのはなぜですか
もいだばかりのとうもろこしは熱を持っていて、その熱があるあいだは呼吸が速く、甘さの元になる糖が使われ続けます。田村農園は収穫後すぐ2℃の冷蔵室に入れますが、芯まで冷え切るには一晩かかります。冷やしきってから箱に詰めることで、梱包中も輸送中も温度が上がらず、甘さを保ったまま届きます。
Q本当に生で食べられますか
お届け当日であれば、そのまま召し上がれます。恵味ゴールドは粒の皮が薄く、実がやわらかい品種です。時間が経つと水分と風味が変わっていきますので、生で食べる場合は到着当日にしてください。
Q届いたらどう保存すればいいですか
すぐ調理しない場合は、ヒゲを上にして立てたまま冷蔵庫へ入れてください。寝かせると熱がこもります。冷蔵で3日から4日は日持ちしますが、糖が少しずつデンプンに変わるため、できるだけ早めがおすすめです。食べきれない分は粒を外して小分けにし、冷凍すれば1ヶ月ほど保存できます。